日本の醤油・ソースメーカー

味で地域が分かる — 濃口・淡口・甘口・たまりの醤油と、ご当地ソースを地域別に整理

日本の醤油・ソースメーカーとは

スーパーの棚に並ぶ多数の醤油のボトル
醤油は地域で味が大きく変わる調味料。関東の濃口、関西の淡口、九州の甘口、中京のたまり——食卓の醤油やソースの銘柄は、その土地の食文化を映す手がかりになります。
画像: スーパーの醤油売り場(CC0)

醤油とソースは、日本の食卓で最も地域差が大きい調味料です。同じ「醤油」でも、関東の濃口、関西の淡口(うすくち)、九州の甘口、中京のたまりではまるで別物。ソースも、関西発祥のウスター、関東で広まった中濃、広島のお好みソースと、地域ごとに主役が異なります。そして醤油・ソースメーカーの大半は地元密着の非上場・同族企業で、その土地でしか主流でない銘柄が今も棚を占めています。

約8割
醤油生産に占める濃口の比率[1]
うすくち=たつの
淡口醤油の本場(兵庫県たつの市)
甘口
九州醤油の特徴(シュガーロードの名残)[2]
大半が非上場
醤油・ソースメーカーは地場の同族企業が中心

醤油の地域性マップ

醤油は製法と地域でいくつかの種類に分かれ、食卓に並ぶ銘柄からおおよその地方が読めます[1]

種類特徴代表産地代表メーカー
濃口全国標準。生産量の約8割。色・味・香りのバランス型関東(千葉・野田/銚子)キッコーマン、ヤマサ、ヒゲタ
淡口(うすくち)色が淡く、素材の色を活かす。関西の出汁文化向け兵庫県たつの市ヒガシマル醤油
白醤油うすくちより淡い琥珀色。小麦主体で甘く香り高い愛知県碧南市七福醸造、日東醸造
たまり大豆主体で濃厚なうま味ととろみ。刺身・照り焼き向け東海・中京(愛知・岐阜・三重)イチビキ、サンビシ、盛田
甘口砂糖・甘味料入りで甘い。刺身にも九州全域・北陸の一部フンドーキン、フンドーダイ、ニビシ

なぜ九州の醤油は甘いのか

九州醤油が甘い最大の要因は、江戸時代のシュガーロードです。鎖国下で唯一の貿易窓口だった長崎・出島から入った砂糖が長崎街道沿いに広まり、沿道に砂糖を多用する食文化が定着しました。九州は一人当たり砂糖使用量が全国平均より多く、南へ行くほど甘味が強まる傾向があります[2]

なぜ醤油・ソースは「ご当地」が色濃いのか

地域の出汁・食文化に最適化されている

淡口は関西の昆布出汁、たまりは中京の味噌文化、甘口は九州の食卓と、各地の味付けに合わせて発達しました。だからこそ「どの醤油が標準か」が地域を映します。

重い・賞味期限・物流という参入障壁

醤油やソースは重く、地元工場から近距離で配るのが効率的です。地場メーカーが地域でシェアを守りやすく、全国大手でも地方の味を完全には置き換えられません。

醤油メーカー — 地域別

北海道・東北

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福山醸造(トモエ)(北海道
非上場。1891年創業。北海道を代表する味噌・醤油ブランド「トモエ」。道内中心。
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ワダカン(青森
非上場。青森県十和田市の醤油・調味料メーカー。東北中心。

関東

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キッコーマン(千葉
上場(2801)。千葉県野田市。濃口醤油の全国標準で、ヒゲタ合算の国内シェアは約3割で首位。世界展開。
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ヤマサ醤油(千葉
非上場(濱口家・約380年)。1645年創業の銚子の老舗。濃口で国内2位(約10%)。
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ヒゲタ醤油(千葉
非上場(キッコーマン系)。銚子の濃口老舗で、関東濃口の源流のひとつ。
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正田醤油(群馬
非上場。1873年設立、館林。濃口・つゆで国内3位級、北関東中心+全国。

中部

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イチビキ(愛知
非上場。1772年創業。名古屋のたまり醤油・赤だしの代表格。中部中心。
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サンビシ(愛知
非上場(ゼンショー系)。豊川。たまり・白醤油
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盛田(愛知
非上場。名古屋。たまり・味噌に加え、小豆島の「マルキン」ブランドも擁する。
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ヤマモリ(三重
非上場。1889年創業、桑名。醤油・つゆに加えタイカレーでも知られる。
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七福醸造(愛知
非上場。碧南の白醤油・白だし専門メーカー。
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ヤマト醤油味噌(石川
非上場。金沢・大野の醸造元。木桶・天然醸造にこだわり、「ひしほ醤油」や魚醤「いしる」、玄米甘酒など糀(こうじ)・発酵食で知られる。観光施設「糀パーク」も運営。石川中心。

関西

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ヒガシマル醤油(兵庫
非上場。兵庫県たつの市。淡口(うすくち)醤油の生産量全国トップ。関西の出汁文化を支える。※福証2058の「ヒガシマル」は鹿児島の別会社。

中国・四国

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井上醤油店(島根
非上場。1867年創業。奥出雲の木桶・古式製法による山陰の地醤油。

九州

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フンドーキン醤油(大分
非上場。1861年創業、臼杵。九州甘口醤油の代表「ゴールデン紫」。九州〜全国。
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フンドーダイ(熊本
非上場。熊本。九州うまくち・甘口醤油。九州中心。
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富士甚醤油(フジジン)(大分
非上場。1883年創業、臼杵。甘口醤油・味噌。九州中心。
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ニビシ醤油(福岡
非上場。1919年創業、古賀。甘口醤油。福岡中心。
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チョーコー醤油(長崎
非上場。長崎の甘口醤油・つゆ。九州中心。

ソースメーカー — 地域別

ウスターソースは関西発祥、中濃は関東で普及、お好み焼きソースは広島(オタフク)が象徴と、ソースも地域色が濃い調味料です。

北海道

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ソラチ(北海道
非上場。芦別。ジンギスカン・豚丼・焼肉のたれ(業務用が強い)。道内中心。
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ベル食品(北海道
非上場。1947年創業、札幌。「成吉思汗たれ」が道民のソウルフード。

関東

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ブルドックソース(東京
上場(2804)。1902年創業、日本橋。東日本地盤でウスターソース類トップシェア。イカリ・ミツワ等を傘下に。

中部

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カゴメ(愛知
上場(2811)。名古屋。ケチャップ・ソース・トマト調味料。全国。
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コーミ(愛知
非上場。1946年創業。名古屋の味「こいくちソース」。中部中心。
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トリイソース(静岡
非上場。1924年創業、浜松。木桶熟成・無添加の地ソース。静岡中心。

関西

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イカリソース(兵庫
非上場(ブルドック傘下)。1896年前身。日本初の本格ウスターソース。関西中心。
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オリバーソース(兵庫
非上場。1923年創業、神戸。「どろソース」で有名。神戸・関西中心。

中国・四国

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オタフクソース(広島
非上場(佐々木家)。1922年創業。お好み焼きソース(お好みソース)で全国的、広島お好み焼き文化の象徴。
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光食品(ヒカリ)(徳島
非上場。1946年創業、上板町。有機・無添加のソース・ケチャップ。

上場している醤油・ソース関連企業の時価総額マップ

醤油・ソースメーカーは大半が非上場の同族企業です。ここでは数少ない上場企業(キッコーマン・ブルドックソース・カゴメ等)を可視化します。ヤマサ・正田・ヒガシマル・フンドーキン・オタフク・イカリ・オリバー等は非上場のため含まれません。

食品

※ 面積は時価総額(概算)に比例しています。2023~2024年頃の株価をベースにした概算値であり最新の株価は反映していないので注意してください。

企業 証券コード 事業概要 決算情報 配当履歴
キッコーマン 醤油首位・濃口の全国標準。海外売上比率が高い国際企業。
ブルドックソース ソース首位。ウスター類トップシェア、イカリ・ミツワを傘下に。
キユーピー マヨネーズ・ドレッシング大手。ソース類に隣接する調味料。
カゴメ ケチャップ・トマト調味料・ソースの最大手。
アリアケジャパン 畜産・水産エキスなど「だし」系調味料の大手。

参考文献・出典

  1. [1] 日本醤油協会「しょうゆの種類と地域性」https://www.soysauce.or.jp/
  2. [2] 農林水産省「砂糖と長崎街道(シュガーロード)」https://www.maff.go.jp/