日本の塗料産業の概観
日本の塗料の国内需要は2024年度実績見込で約124万トン[1]で推移しており、年間出荷金額はおよそ7,000億円規模と推定されています[1]。世界の塗料市場(金額ベース約2,170億ドル)の中で日本は数量ベース世界4〜5位、メーカー規模では日本ペイントHDが世界4位、関西ペイントが世界8位[2]にランクされる輸出競争力を持ちます。
用途別の市場構造
塗料の用途は大きく5分野に分かれ、それぞれ異なるサプライヤー構造を持ちます。
| 用途 | 概要 | 主要メーカー |
|---|---|---|
| 建築用 | 住宅・ビル・マンションの内外装、屋根・外壁 | 日本ペイント、関西ペイント、エスケー化研、菊水化学 |
| 自動車用(OEM) | 完成車塗装ライン向け(電着・中塗り・上塗り・クリア) | 日本ペイントオートモーティブ、関西ペイント、BASFコーティングス |
| 自動車補修用(リフィニッシュ) | 板金・補修ショップ向け | 日本ペイント、関西ペイント、デュポン、PPG |
| 工業用(産業機器・電機・建材) | 家電・OA機器・鋼製品など | 日本ペイント、関西ペイント、大日本塗料、神東塗料 |
| 船舶用(マリン) | 船底防汚塗料・上部構造塗料 | 中国塗料、日本ペイントマリン(NPMC)、関西ペイントマリン |
| 重防食 | 橋梁・タンク・プラント・鉄構造物 | 大日本塗料、日本ペイント防食コーティングス、関西ペイント |
| 粉体塗料・特殊 | 焼付塗装、電子部品 | 日本ペイント、関西ペイント、ロックペイント |
3大メーカー
日本ペイントホールディングス(4612)
1881年(明治14年)[3]に茂木重次郎が東京で創業した日本最古の塗料メーカーで、現在は東京(品川シーズンテラス)と大阪(大淀北)の2本社制[3]です。シンガポールのWuthelam Group(呉氏一族)を筆頭株主として迎え、グローバル企業統合(オーストラリアDuluxGroup買収、米Cromologyなど)を進め、世界4位級(連結売上1.4〜1.7兆円規模)[2]の塗料企業に成長しました。
主力子会社:
- 日本ペイント・オートモーティブコーティングス(NPA、自動車OEM)
- 日本ペイント・インダストリアルコーティングス
- 日本ペイント・マリン(NPMC、船舶用)
- 日本ペイント防食コーティングス
関西ペイント(4613)
1918年[4]に岩井勝次郎 が大阪で創業した総合塗料メーカー。本社は大阪市北区梅田で、自動車OEM塗料・補修塗料に強みを持ちます。世界8位 [2]の塗料メーカーで、インド・トルコ・南アフリカ・東南アジアでの存在感が大きいのが特徴です。尼崎事業所 が国内最大の工場で、自動車・工業塗料の主力ラインを擁します。
大日本塗料(4611)
1929年創業[5]、本社は大阪市中央区南船場。重防食・建材用塗料の最大手 で、橋梁・タンク・プラントなどの社会インフラ向けに高い実績を持ちます。栃木県小山市の小山工場 が重防食塗料の主力拠点です。
船舶用塗料 — 「中国塗料」が世界トップ級
中国塗料(4617)[6]は社名の「中国」は中国地方(広島)を指し、広島県大竹市発祥の独立系塗料メーカーです。船底防汚塗料(アンチファウリング)で世界トップ3(CMP / 日本ペイントマリン NPMC / Hempel / Jotun / AkzoNobel)に入る存在で、海外売上比率が高い日本の塗料メーカーの代表例です。日本ペイントマリン(神戸)と合わせ、日本は世界の船舶塗料供給の中核を担います。
主要中堅メーカー
| 企業 | 本社 | 強み |
|---|---|---|
| エスケー化研 | 大阪府茨木市 | 建築用塗料(外壁仕上げ材)国内トップ |
| 菊水化学工業 | 名古屋 | 建築用塗料・工法 |
| 神東塗料 | 兵庫県尼崎市 | 工業用塗料、関西ペイント傘下 |
| ロックペイント | 大阪市東成区 | 自動車補修・工業 |
| 神東ペイント/藤倉化成 | — | 工業用 |
| イサム塗料 | 大阪市淀川区 | 自動車補修 |
| アトミクス | 東京都荒川区 | 床用・路面標示 |
| 太陽塗料 | 神奈川県川崎市 | 工業用 |
| 染めQテクノロジィ | 神奈川県相模原市 | 特殊塗料 |
| エスケー化研 | 大阪府茨木市 | 建築用塗料・外壁材(4628上場) |
| DIC | 東京都中央区 | 化学・塗料・顔料(5106上場) |
なぜ大阪に本社が集中するのか
3大メーカーすべてが大阪に本社(または主要拠点)を置く背景には、明治期〜大正期の関西経済圏の繁栄があります。大阪は染料・薬品・油脂工業の集積地で、塗料の原料となる亜麻仁油・桐油・顔料・樹脂[7]のサプライヤーが集まっていました。また、関西〜瀬戸内に造船・自動車・電機の需要が集中していたことも、塗料メーカーが関西に根付く要因となりました。
日本の上場塗料メーカー時価総額マップ
※ 東証上場の主要塗料メーカー。エスケー化研(4628)・DIC(5106)等中堅メーカーも含む。
関連企業の時価総額マップと企業情報
| 企業 | 証券コード | 事業概要 | 決算情報 | 配当履歴 |
|---|---|---|---|---|
| ■ 総合塗料メーカー(3大グループ) | ||||
| 日本ペイントHD | 1881年創業の日本最古の塗料メーカー。東京・大阪二本社制で世界4位の塗料企業。自動車OEM・建築・工業・船舶用塗料で業界トップシェアを維持し、グローバル戦略により[オーストラリア](/rule/oceania/australia/)DuluxGroup等を買収して多角化。連結売上約1.4〜1.7兆円規模[3]。 | |||
| 関西ペイント | 1918年創業の大阪本社・総合塗料メーカー。世界8位で自動車OEM塗料・補修塗料に強み。尼崎事業所が国内最大級の製造拠点。インド・トルコ・南アフリカ・東南アジアでの存在感が業界内で大きく、国内外での建築・自動車・工業用塗料で競争力を持つ[4]。 | |||
| 大日本塗料 | 1929年創業の大阪本社メーカー。重防食・建材用塗料では国内最大手で、橋梁・タンク・プラント・鉄構造物などの社会インフラ向けに高い実績を誇る。栃木県小山市工場が重防食塗料の主力拠点で、業界内での技術的地位が確立している[5]。 | |||
| ■ 特化型・中堅メーカー | ||||
| 中国塗料 | 広島県大竹市発祥の独立系塗料メーカー。船底防汚塗料(アンチファウリング)で世界トップ3に位置し、海外売上比率が高いのが特徴。CMP・日本ペイントマリンと並んで、日本は世界の船舶塗料供給の中核を担う[6]。 | |||
| エスケー化研 | 大阪府茨木市本社の中堅塗料メーカー。建築用塗料・外壁仕上げ材で国内トップクラスのシェアを有し、特に日本住宅市場での確実な市場ポジション。高耐久性塗料・防藻・防カビ材料で業界内で一定の評価を持つ。 | |||
| DIC | 東京都中央区本社の化学・塗料・顔料の総合企業。高機能塗料・印刷インク・カラーマテリアルを主力事業とし、自動車OEM・建築・電子部品向けの高付加価値製品で競争力を発揮。グローバル展開により差別化された塗料・顔料で市場地位を確保[8]。 | |||
参考文献
参考文献・出典
- [1] 日本塗料工業会(JPMA)「統計・需要実績」https://www.toryo.or.jp/jp/data/index.html
- [2] コーティングメディア「シャーウィン・ウィリアムズが1位に 世界塗料メーカーランキング」https://www.coatingmedia.com/online/a/1-10.html
- [3] 日本ペイントホールディングス「会社情報」https://www.nipponpaint-holdings.com/company/outline/
- [4] 関西ペイント「会社情報」https://www.kansai.co.jp/company/overview/
- [5] 大日本塗料「会社情報」https://www.dnt.co.jp/company/about/index.html
- [6] 中国塗料「会社情報」https://www.cmp.co.jp/
- [7] 日本塗料工業会「日塗工の概要 2024」https://www.toryo.or.jp/jp/info/jpma/summary2024.html
- コーティングメディア「塗料・塗装白書 2024」https://www.coatingmedia.com/publication/whitepaper/whitepaper2024.html
- WEB塗料報知「2025年度需要予測、微増の124万8千t」https://www.e-toryo.co.jp/statistics/toryo-116/