日本のコンクリート二次製品

ヒューム管・コンクリートパイル・セグメント — セメント川下の建設基礎資材

最終更新: 2026年4月13日

日本のコンクリート二次製品とは

ヒューム管・コンクリート二次製品
ヒューム工業(ニュージーランド)の工場でストックされたコンクリート二次製品。ヒューム管はオーストラリアのヒューム兄弟が発明した遠心力成型コンクリート管で、日本では日本ヒュームなどが下水管・推進管として量産しています。
画像: Unknown / Wikimedia Commons (Public domain)

コンクリート二次製品とは、セメント・砂・砂利・鉄筋などを工場で成形・養生して出荷する既製品の総称です。現場打ちコンクリートと異なり、工場の管理された環境で製造するため品質が安定し、現場の工期を大幅に短縮できます。

日本セメント工業が「石灰石→クリンカ→セメント」という川上を担うのに対し、コンクリート二次製品は「セメント→コンクリート→建設用既製品」という川下に位置します。製品は重量物のため輸送コストが大きく、工場は需要地(大都市圏)や港湾に近い場所に立地する傾向があります。

主な製品カテゴリ

ヒューム管(遠心力鉄筋コンクリート管)

ヒューム管は、1910年にオーストラリアの技術者ウォルター・ヒューム(Walter Hume)が考案した遠心力成形法で製造するコンクリート管です[1]。回転する型枠にコンクリートを投入し、遠心力で締め固めることで、緻密で高強度な管体を得られます。主に下水道・排水路・農業用水路に用いられ、日本では1925年(大正14年)に日本ヒュームコンクリート(現・日本ヒューム)が鶴見工場で量産を開始したのが始まりです[1]

近年は下水道の新設需要が減少する一方、老朽管の更新・耐震化需要が底堅く、推進工法(非開削)に対応した推進管の比率が高まっています。

コンクリートパイル(杭)

建築物の基礎を支える既製コンクリート杭は、日本の建設現場で最も広く用いられる杭基礎工法の一つです。主な種類は以下の通りです。

PHC杭 プレテンション
高強度コンクリート杭
最も汎用的
SC杭 外殻鋼管付き
コンクリート杭
高い靱性
PRC杭 プレストレスト
鉄筋コンクリート杭
曲げ強度重視
節杭 節付きコンクリート杭 高い支持力

杭の製造工場では、オートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)により短時間で高強度を発現させます。プレテンション方式では、長さ数十メートルの製造ラインでPC鋼線を緊張してからコンクリートを打設する独特の長大な工場景観が見られます。

シールドセグメント

シールドトンネル工法で掘削されたトンネルの内壁を構成する弧状の部材です[2]。首都圏の地下鉄延伸・共同溝・下水道幹線など大口径トンネル工事で需要があります。RCセグメント(鉄筋コンクリート)とスチールセグメントの2種があり、ジオスターは前者の大手です。

コンクリートポール・パイル以外の製品

電力会社・通信会社向けのコンクリートポール(電柱)、道路横断用のボックスカルバート、鉄道用のPCまくらぎ、護岸用ブロックなど、多様な製品が工場生産されています。

業界構造の特徴

コンクリート二次製品業界には、セメント業界のような大規模な集約が進んでいない点に特徴があります。

製品が重い(ヒューム管1本で数百kg〜数トン、杭1本で数トン)ため長距離輸送のコストが大きく、地域ごとに中堅メーカーが分散して存在する構造です。また、公共工事比率が高いため、国土交通省・地方自治体の下水道・道路予算に業績が大きく左右されます。

近年の注目点は、インフラ老朽化に伴う更新投資と、南海トラフ地震を見据えた耐震化、そして建設現場の人手不足に対応したプレキャスト化の推進(i-Construction)[3]です。

関連企業の時価総額マップ

ヒューム管・パイル・セグメント・ポールなどコンクリート二次製品を手がける主要上場企業の時価総額を可視化しています。

企業 証券コード 事業概要 決算情報 配当履歴
■ コンクリートパイル
三谷セキサン 福井県に本社を置くコンクリートパイル大手。PHC杭・SC杭・節杭など既製コンクリート杭の製造販売で国内トップクラス。情報システム事業も手がける二本柱経営。全国に製造拠点を配置し、大都市圏の建築需要を支える[4]
日本コンクリート工業 コンクリートポール(電柱)とコンクリートパイル(杭)の二本柱。電力会社・NTT向けポールで高いシェアを持つ。パイル事業ではPHC杭・SC杭を製造[5]
■ ヒューム管・推進管
日本ヒューム 1925年設立のヒューム管専業大手。遠心力鉄筋コンクリート管(ヒューム管)・推進管・マンホールなど下水道関連製品を製造。老朽下水道の更新需要を取り込む。日本のヒューム管製造の草分け的存在[1]
旭コンクリート工業 ヒューム管・ボックスカルバート・推進管・擁壁などの土木用コンクリート二次製品を幅広く製造。ボックスカルバート(箱型暗渠)は道路横断構造物として全国で使用される[6]
■ シールドセグメント・プレキャスト
ジオスター シールドセグメント(トンネル内壁用プレキャスト部材)の大手。推進管・PCまくらぎ(鉄道用枕木)なども手がける。首都圏の大規模トンネル工事でセグメント需要を確保。太平洋セメントグループ[2]
ヤマックス 熊本県に本社を置くプレキャストコンクリート製品メーカー。擁壁・L型水路・ボックスカルバートなど土木用二次製品を幅広く製造。九州を中心に事業展開[7]

セメント工業との関係

コンクリート二次製品は、セメント工業で製造されたセメントの主要な川下需要先です。

graph LR A["石灰石鉱山\n(武甲山・伊佐・津久見)"]-->B["セメント工場\n(太平洋・UBE三菱・住友大阪)"] B-->C["生コンクリート\nプラント"] B-->D["コンクリート二次製品\n工場"] C-->E["現場打ち\nコンクリート"] D-->F["ヒューム管\n推進管"] D-->G["コンクリートパイル\nPHC・SC杭"] D-->H["セグメント\nポール・カルバート"] style A fill:#dbeafe,color:#1e3a5f,stroke:#3b82f6,stroke-width:2px style B fill:#fee2e2,color:#7f1d1d,stroke:#dc2626,stroke-width:2px style D fill:#d1fae5,color:#065f46,stroke:#10b981,stroke-width:2px style F fill:#f3f4f6,color:#1f2937,stroke:#9ca3af style G fill:#f3f4f6,color:#1f2937,stroke:#9ca3af style H fill:#f3f4f6,color:#1f2937,stroke:#9ca3af

セメント大手の中では、太平洋セメントグループがジオスターを傘下に持つなど、川上と川下の垂直統合も一部見られます。一方で多くの二次製品メーカーは独立系であり、セメントは複数社から調達しています。

参考文献・出典

  1. [1] 日本ヒューム株式会社「会社情報」https://www.nipponhume.co.jp/company/
  2. [2] ジオスター株式会社「製品情報」https://www.geostr.co.jp/products/
  3. [3] 国土交通省「i-Construction — 建設現場の生産性向上」https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/
  4. [4] 三谷セキサン株式会社「会社情報」https://www.mitani-sekisan.co.jp/company/
  5. [5] 日本コンクリート工業株式会社「会社案内」https://www.nc-kon.co.jp/company/
  6. [6] 旭コンクリート工業株式会社「会社案内」https://www.asahi-concrete.co.jp/company/
  7. [7] ヤマックス株式会社「会社情報」https://www.yamax.co.jp/company/
  8. 全国コンクリート製品協会「コンクリート製品について」https://www.zenconcrete.or.jp/