日本の飲料容器・パッケージング産業の概観
画像: Wikimedia Commons
飲料容器・パッケージング産業は、飲み物を「容器に詰めて売る」までの工程を担う裏方の産業です。金属缶(アルミ・スチール)・PETボトル・ガラス瓶・キャップといった容器本体に加え、商品名やデザインを表示するシュリンクラベル、中身を詰める充填・ボトリング機械まで、複数の専門分野で構成されます。日本では東洋製罐グループが容器全般で国内首位、フジシールがラベルで世界に先駆け、澁谷工業が無菌充填機で世界級と、各セグメントで強い上場企業がそろう、すそ野の広いニッチ産業です。
主要上場4社の比較
| 企業 | 証券コード | 設立 | 本社 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 東洋製罐グループHD(洋缶HD) | 5901 | 1917[1] | 東京・品川区 | 包装容器の国内最大手。金属缶・PETボトル・ガラス瓶・キャップで国内首位。傘下に東洋製罐・東洋ガラス・日本クロージャー・東罐興業 |
| フジシール | 7864 | 1897[3] | 大阪・大阪市 | シュリンクラベル国内首位・世界先駆。タックラベル、ソフトパウチ、装着機械まで一貫展開 |
| 澁谷工業 | 6340 | 1931[4] | 石川・金沢市 | PET無菌充填システム国内シェア約8〜9割。ボトリングプラント、メカトロ(レーザー・医療)、農業機械も |
| ホッカンHD | 5902 | 2005[5](持株会社化) | 東京・千代田区 | 金属缶・PETボトル・充填を手がける業界3位。北海製罐由来の製缶事業が源流 |
セグメント別の市場構造
飲料容器は容器の種類ごとに強いメーカーが分かれ、上場企業のほか非上場の有力企業も多いのが特徴です。
| セグメント | 主な役割 | 強い日本企業 |
|---|---|---|
| 金属缶(アルミ・スチール) | 飲料・食品の缶 | 東洋製罐、ホッカン、大和製罐・アルテミラ・武内プレス(いずれも非上場)[6] |
| PETボトル | 清涼飲料・水 | 東洋製罐、ホッカン(飲料メーカーの内製も多い) |
| ガラス瓶 | ビール・調味料・飲料 | 東洋ガラス(東洋製罐G)、日本山村硝子(5210)、石塚硝子(5204) |
| キャップ・クロージャー | PET・瓶のふた | 日本クロージャー(東洋製罐G)、三笠産業(非上場) |
| シュリンクラベル | 容器の表示・装飾 | フジシール、大日本印刷・TOPPAN |
| 充填・ボトリング機械 | 中身を容器に詰める | 澁谷工業、三菱重工機械システム |
容器は「重い・かさばる・単価が安い」ため輸送コストが効きやすく、飲料メーカーの工場近くに容器工場を置く「ひも付き・地産地消」の構造になりやすいのが特徴です。
海外メーカーとの比較
| メーカー | 国 | 強み |
|---|---|---|
| 東洋製罐グループ | 容器全般で国内首位 | |
| フジシール | シュリンクラベル世界先駆 | |
| 澁谷工業 | 無菌充填システムで世界級 | |
| Ball Corporation | 飲料用アルミ缶 世界最大手 | |
| Crown Holdings | 金属缶 世界大手 | |
| Krones | ボトリング・充填ライン 世界最大手 | |
| Tetra Pak | 紙容器(無菌充填)世界最大手 |
金属缶は世界では米国のBall・Crownが二強で、東洋製罐は国内首位ながら世界シェアでは中位です。充填機械はドイツのKronesが世界最大手で、澁谷工業は無菌充填(アセプティック)の信頼性で世界に食い込んでいます。
日本での飲料容器メーカーの地理的特徴
容器工場は輸送効率のため全国の飲料生産地に分散しますが、本社・開発拠点には地域色があります。
| 企業 | 本社 | 特徴 |
|---|---|---|
| 東洋製罐グループHD | 東京・品川 | 全国に缶・PET・ガラス・キャップの工場網を展開 |
| フジシール | 大阪 | ラベル工場を国内外に。欧米・アジアにも展開 |
| 澁谷工業 | 石川・金沢 | 北陸(金沢)を拠点に充填プラントを世界へ輸出 |
| ホッカンHD | 東京・千代田 | 製缶・PET・充填を一貫。北海道由来の製缶が源流 |
充填機械大手の澁谷工業が石川県金沢市に本社を置くのは、北陸が古くから機械・繊維機械の集積地であった歴史を反映しています。
なぜ日本の飲料容器産業が強いのか
- 飲料市場の大きさと多様性: 缶コーヒー・お茶・水・酒など多品種の飲料文化が、容器・充填技術の高度化を促した
- 無菌充填(アセプティック)技術: 常温保存できるお茶・コーヒー需要に応え、澁谷工業などが高度な無菌充填を確立[2]
- 軽量化・省資源: 缶・PETの薄肉化や世界最軽量缶など、原料コストと環境対応の両面で技術が進む
- ラベル・印刷との一体化: フジシールや印刷大手が容器の表示・装着まで一貫提供できる層の厚さ
主要4社の売上高比較
飲料容器 主要4社 売上高(百万円)
※ 売上高は各社の直近通期実績(百万円)。
日本の飲料容器メーカー時価総額マップ
※ 各社の時価総額は容器・包装以外の事業(澁谷工業のメカトロ・医療など)を含む連結値。
参考文献・出典
- [1] 「東洋製罐グループホールディングス」Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/東洋製罐グループホールディングス
- [2] 今村証券アナリストレポート「澁谷工業(6340)」PDF
- [3] フジシールインターナショナル「シュリンクラベル事業」https://www.fujiseal.com/jp/product/shrink.html
- [4] 「澁谷工業」Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/澁谷工業
- [5] ホッカンホールディングス(北海製罐に源流を持つ製缶・容器メーカー)https://www.hokkan.co.jp/
- [6] deallab「金属缶・アルミ缶・スチール缶業界の世界市場シェアの分析」https://deallab.info/can/