日本の飲料容器・パッケージング産業

東洋製罐・フジシール・澁谷工業・ホッカン — 缶・PET・ラベル・充填機まで「飲料を詰める」工程を担う産業

最終更新: 2026年6月30日

日本の飲料容器・パッケージング産業の概観

アルミ飲料缶
アルミ飲料缶。アルミ缶は繰り返しリサイクルできる代表的な飲料容器で、東洋製罐は2024年に世界最軽量級のアルミ缶を開発するなど、軽量化・省資源で各社が競っています。
画像: Wikimedia Commons

飲料容器・パッケージング産業は、飲み物を「容器に詰めて売る」までの工程を担う裏方の産業です。金属缶(アルミ・スチール)・PETボトル・ガラス瓶・キャップといった容器本体に加え、商品名やデザインを表示するシュリンクラベル、中身を詰める充填・ボトリング機械まで、複数の専門分野で構成されます。日本では東洋製罐グループが容器全般で国内首位、フジシールがラベルで世界に先駆け、澁谷工業が無菌充填機で世界級と、各セグメントで強い上場企業がそろう、すそ野の広いニッチ産業です。

国内首位
東洋製罐グループ(缶・PET・ガラス瓶)[1]
約80〜90%
澁谷工業 PET無菌充填システムの国内シェア[2]
1961年
フジシールがシュリンクラベルを世界に先駆けて開発[3]

主要上場4社の比較

企業証券コード設立本社特徴
東洋製罐グループHD(洋缶HD)59011917[1]東京・品川区包装容器の国内最大手。金属缶・PETボトル・ガラス瓶・キャップで国内首位。傘下に東洋製罐・東洋ガラス・日本クロージャー・東罐興業
フジシール78641897[3]大阪・大阪市シュリンクラベル国内首位・世界先駆。タックラベル、ソフトパウチ、装着機械まで一貫展開
澁谷工業63401931[4]石川・金沢市PET無菌充填システム国内シェア約8〜9割。ボトリングプラント、メカトロ(レーザー・医療)、農業機械も
ホッカンHD59022005[5](持株会社化)東京・千代田区金属缶・PETボトル・充填を手がける業界3位。北海製罐由来の製缶事業が源流

セグメント別の市場構造

飲料容器は容器の種類ごとに強いメーカーが分かれ、上場企業のほか非上場の有力企業も多いのが特徴です。

セグメント主な役割強い日本企業
金属缶(アルミ・スチール)飲料・食品の缶東洋製罐、ホッカン、大和製罐・アルテミラ・武内プレス(いずれも非上場)[6]
PETボトル清涼飲料・水東洋製罐、ホッカン(飲料メーカーの内製も多い)
ガラス瓶ビール・調味料・飲料東洋ガラス(東洋製罐G)、日本山村硝子(5210)、石塚硝子(5204)
キャップ・クロージャーPET・瓶のふた日本クロージャー(東洋製罐G)、三笠産業(非上場)
シュリンクラベル容器の表示・装飾フジシール、大日本印刷・TOPPAN
充填・ボトリング機械中身を容器に詰める澁谷工業、三菱重工機械システム

容器は「重い・かさばる・単価が安い」ため輸送コストが効きやすく、飲料メーカーの工場近くに容器工場を置く「ひも付き・地産地消」の構造になりやすいのが特徴です。

海外メーカーとの比較

メーカー強み
東洋製罐グループJP 日本容器全般で国内首位
フジシールJP 日本シュリンクラベル世界先駆
澁谷工業JP 日本無菌充填システムで世界級
Ball CorporationUS 米国飲料用アルミ缶 世界最大手
Crown HoldingsUS 米国金属缶 世界大手
KronesDE ドイツボトリング・充填ライン 世界最大手
Tetra PakSE スウェーデン紙容器(無菌充填)世界最大手

金属缶は世界では米国のBall・Crownが二強で、東洋製罐は国内首位ながら世界シェアでは中位です。充填機械はドイツのKronesが世界最大手で、澁谷工業は無菌充填(アセプティック)の信頼性で世界に食い込んでいます。

日本での飲料容器メーカーの地理的特徴

容器工場は輸送効率のため全国の飲料生産地に分散しますが、本社・開発拠点には地域色があります。

企業本社特徴
東洋製罐グループHD東京・品川全国に缶・PET・ガラス・キャップの工場網を展開
フジシール大阪ラベル工場を国内外に。欧米・アジアにも展開
澁谷工業石川・金沢北陸(金沢)を拠点に充填プラントを世界へ輸出
ホッカンHD東京・千代田製缶・PET・充填を一貫。北海道由来の製缶が源流

充填機械大手の澁谷工業が石川県金沢市に本社を置くのは、北陸が古くから機械・繊維機械の集積地であった歴史を反映しています。

なぜ日本の飲料容器産業が強いのか

  • 飲料市場の大きさと多様性: 缶コーヒー・お茶・水・酒など多品種の飲料文化が、容器・充填技術の高度化を促した
  • 無菌充填(アセプティック)技術: 常温保存できるお茶・コーヒー需要に応え、澁谷工業などが高度な無菌充填を確立[2]
  • 軽量化・省資源: 缶・PETの薄肉化や世界最軽量缶など、原料コストと環境対応の両面で技術が進む
  • ラベル・印刷との一体化: フジシールや印刷大手が容器の表示・装着まで一貫提供できる層の厚さ

主要4社の売上高比較

飲料容器 主要4社 売上高(百万円)

※ 売上高は各社の直近通期実績(百万円)。

日本の飲料容器メーカー時価総額マップ

※ 各社の時価総額は容器・包装以外の事業(澁谷工業のメカトロ・医療など)を含む連結値。

企業 証券コード 事業概要 決算情報 配当履歴
東洋製罐グループHD5901金属缶・PETボトル・ガラス瓶・キャップで国内首位の包装容器最大手。傘下に東洋製罐・東洋ガラス・日本クロージャー・東罐興業を持ち、容器全般を一貫して供給する。
フジシール7864シュリンクラベルを世界に先駆けて開発した国内首位のラベルメーカー。タックラベル・ソフトパウチ、さらに装着機械まで一貫してグローバルに展開する。
澁谷工業6340PET無菌充填システムで国内シェア約8〜9割を握る充填・ボトリング機械の大手。レーザー・医療機器などメカトロ事業、農業機械も手がける多角的な機械メーカー。
ホッカンHD5902金属缶・PETボトルの製造と充填を一貫して手がける業界3位。北海製罐に源流を持ち、容器の製造から中身の充填まで受託するパッケージングメーカー。

参考文献・出典

  1. [1] 「東洋製罐グループホールディングス」Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/東洋製罐グループホールディングス
  2. [2] 今村証券アナリストレポート「澁谷工業(6340)」PDF
  3. [3] フジシールインターナショナル「シュリンクラベル事業」https://www.fujiseal.com/jp/product/shrink.html
  4. [4] 「澁谷工業」Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/澁谷工業
  5. [5] ホッカンホールディングス(北海製罐に源流を持つ製缶・容器メーカー)https://www.hokkan.co.jp/
  6. [6] deallab「金属缶・アルミ缶・スチール缶業界の世界市場シェアの分析」https://deallab.info/can/