日本の製紙・パルプ産業とは
画像: MIKI Yoshihito / Wikimedia Commons (CC BY 2.0)
製紙・パルプは、大量の水・木材繊維・電力を必要とする典型的な装置産業です。日本の製紙工場は、豊富な水(河川)と港湾を持つ地域に集中して立地しており、富士市・苫小牧・四国中央市・八代・石巻・岩国などが代表的な紙のまちとして知られています。
日本の紙・板紙生産量は中国・米国に次ぐ世界第3位級[1]で、2007年頃の約3,200万トンをピークに、印刷・新聞用紙の需要減少を背景に縮小傾向にあります。一方で、EC需要を背景に段ボール原紙・板紙は底堅く推移しており、業界全体としては「印刷・情報用紙の縮小と段ボール・パッケージへのシフト」が大きなトレンドとなっています[1]。2023年の生産量は約2,200万トン(21.99百万トン)です。
主要4社
王子ホールディングス(3861)
国内最大手で、世界の製紙メーカーの中でも上位に位置します。新聞用紙・板紙・段ボール・パルプ・産業用素材など幅広く展開しています[4]。主要工場は次の通りです。
| 工場 | 所在地 | 主な製品 |
|---|---|---|
| 苫小牧工場 | 北海道苫小牧市 | 新聞用紙の国内最大級拠点 |
| 江別工場 | 北海道江別市 | 印刷・情報用紙 |
| 米子工場 | 鳥取県米子市 | 印刷用紙 |
| 春日井工場 | 愛知県春日井市 | 板紙・パッケージ |
| 富士工場 | 静岡県富士市 | 紙・板紙 |
| 呉工場 | 広島県呉市 | パルプ・板紙 |
| 日南工場 | 宮崎県日南市 | クラフトパルプ |
日本製紙(3863)
国内2位の総合製紙会社で、印刷・情報用紙・パッケージ・パルプを中核としています[5]。
| 工場 | 所在地 | 主な製品 |
|---|---|---|
| 石巻工場 | 宮城県石巻市 | 印刷・情報用紙の主力。書籍用紙の国内シェア約4割 |
| 富士工場 | 静岡県富士市 | 印刷・情報用紙 |
| 岩国工場 | 山口県岩国市 | 1939年操業開始。塗工紙・化成品。CNF実証設備[5] |
| 八代工場 | 熊本県八代市 | 九州唯一の多品種・一貫生産工場 |
| 旭川・釧路工場 | 北海道 | 印刷用紙・パルプ |
| 勿来工場 | 福島県いわき市 | 板紙 |
大王製紙(3880)
国内3位。愛媛県四国中央市三島工場 を中核とし、新聞用紙・段ボール原紙・衛生用紙(エリエール)まで幅広く展開しています[6]。三島工場は単一拠点としての規模が国内最大級。
レンゴー(3941)
板紙・段ボール最大手で、国内段ボール市場でシェア約25%を持ちます[7]。製紙工場5か所、段ボール工場25か所のネットワークを持ち、近年は EC 需要の拡大で成長しています。
主要産地クラスター
| 産地 | 特徴 |
|---|---|
| 富士・富士宮(静岡県) | 全国紙生産量の約11%を占める一大集積地。約70社の製紙会社が立地し、富士山の伏流水を活用。紙・紙加工品出荷額は全国2位[8] |
| 苫小牧(北海道) | 王子製紙苫小牧工場が立地。新聞用紙の国内最大級の供給拠点[4] |
| 四国中央市(愛媛県) | 大王製紙三島工場・丸住製紙・リンテック・ユニ・チャームなどが集積。紙関連製造品出荷額は約5,100億円超で日本一(20年連続)。書道用紙の全国シェア約7割[3] |
| 八代(熊本県) | 日本製紙八代工場。球磨川の水を活用し、九州唯一の多品種一貫生産工場 |
| 石巻(宮城県) | 日本製紙石巻工場。書籍用紙の国内シェア約4割。東日本大震災で大きな被害を受けたが復興 |
| 岩国(山口県) | 日本製紙岩国工場。1939年操業の伝統工場。CNF(セルロースナノファイバー)の実証拠点[5] |
「紙のまち」四国中央市
愛媛県四国中央市は、紙関連製品の製造品出荷額が約5,100億円超で日本一を20年連続で維持している、文字通り日本の紙の中心地です[3]。市内には大王製紙三島工場をはじめ、丸住製紙、リンテック、ユニ・チャームなどの主要工場が立ち並びます。書道用紙の全国シェアは約7割に達し、ティッシュ・トイレットペーパーなど家庭紙の生産でも全国有数です。
古紙リサイクルとサーキュラーエコノミー
日本の古紙利用率は66.6%(2024年)で世界トップクラスであり、特に板紙(段ボール用紙など)では95%前後にまで達しています[2]。これは、自治体・古紙問屋・製紙メーカーが連携した日本独自の回収システムによるものです。
産業の動向 — 段ボール・CNF・バイオマス
- 段ボール・パッケージの拡大: EC需要の拡大により段ボール原紙・包装用紙が成長分野に。レンゴー・王子・日本製紙ともパッケージ分野を強化[7]。
- 新聞・印刷用紙の縮小: デジタル化とペーパーレス化により需要が減少。各社は工場の生産設備を統廃合し、輸出へシフト。王子製紙苫小牧工場のN-4マシンは2026年3月末停止予定[4]。
- CNF(セルロースナノファイバー): 日本製紙岩国・石巻工場、大王製紙三島工場、王子HDで量産・研究開発が進む。樹脂強化材・化粧品・食品・医療材料への応用[9]。
- バイオマス発電: 製紙工程で生じる黒液(パルプ製造時の廃液)を燃焼してエネルギー回収する「自家バイオマス発電」は、日本の製紙業界の標準的な取り組み。日本製紙の勇払バイオマス発電所など、独立した発電事業も展開。
関連企業の時価総額マップ
国内主要4社と関連企業の時価総額を可視化しています。
※ 面積は時価総額(概算)に比例しています。2023~2024年頃の株価をベースにした概算値であり最新の株価は反映していないので注意してください。
| 企業 | 証券コード | 事業概要 | 決算情報 | 配当履歴 |
|---|---|---|---|---|
| ■ 製紙総合(4大グループ) | ||||
| 王子ホールディングス | 国内最大手の総合製紙メーカーで、2012年に王子製紙が持株会社制へ移行して発足。苫小牧(新聞用紙国内最大級)・江別・米子・春日井・富士・呉・日南など国内外に主要工場を展開し、新聞用紙・印刷用紙・板紙・段ボール・パッケージ・パルプ・産業用素材まで幅広くカバーする[4]。 | |||
| 日本製紙 | 国内2位の総合製紙メーカー。石巻(書籍用紙国内シェア約4割)・富士・岩国(CNF拠点)・八代を主力工場として印刷用紙・パッケージ・パルプ・CNFを展開[5]。 | |||
| 大王製紙 | 国内3位。四国中央市三島工場が単一拠点としては国内最大級。エリエールブランドの衛生用紙・新聞用紙・段ボール原紙を展開する総合製紙メーカー[6]。 | |||
| レンゴー | 板紙・段ボール最大手。国内段ボール市場でシェア約25%を占有。製紙工場5か所・段ボール工場25か所のネットワークを展開。EC需要拡大で成長基調[7]。 | |||
| ■ 専業・中堅 | ||||
| 北越コーポレーション | 本社は東京都中央区日本橋本石町。新潟工場(新潟県長岡市)を中核に、印刷・情報用紙・特殊紙・パッケージを展開。国内製紙業界の主要プレイヤーとして紙のまちを支える。 | |||
| 中越パルプ工業 | 本社は富山県高岡市。高岡工場・二塚工場を中核に、印刷用紙・特殊紙・段ボール原紙・バイオマス発電を展開。竹パルプでも国内最大級の製造能力を持つ中堅製紙メーカー。 | |||
参考文献・出典
- [1] 日本製紙連合会「紙・板紙」https://www.jpa.gr.jp/states/paper/
- [2] 日本製紙連合会「古紙」https://www.jpa.gr.jp/states/used-paper/
- [3] 四国中央市「紙のまちのデータ」https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/soshiki/22/37567.html
- [4] 王子ホールディングス株式会社「拠点一覧」https://www.ojiholdings.co.jp/group/network.html
- [5] 日本製紙グループ「事業所・工場一覧」https://www.nipponpapergroup.com/about/branch/factory/
- [6] 大王製紙株式会社「事業所一覧」https://www.daio-paper.co.jp/company/base/
- [7] レンゴー株式会社「会社概要」https://www.rengo.co.jp/company/outline/
- [8] 富士市「富士の紙」https://www.city.fuji.shizuoka.jp/sangyou/c0204/fmervo000000ah0r.html
- [9] 日本製紙株式会社「セルロースナノファイバー」https://www.nipponpapergroup.com/products/cnf/