基本データ
製造品出荷額
約10兆
億円規模(R4経済センサス・原油高を反映)
コンビナートの産業ネットワーク
京葉コンビナートでは、製油所・石化プラント・製鉄所がパイプラインと物流網で結びつき、原材料から最終製品まで一貫した生産ネットワークを形成しています。
石油化学系
鉄鋼系
石油化学プロセスとコンビナート内の製品フロー
石油化学コンビナートの根幹は**ナフサ分解装置(スチームクラッカー)**です。製油所から供給されるナフサ(粗ガソリン留分)を蒸気とともに800℃超で熱分解し、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンなどの基礎化学品を生産します[3]。
京葉地区のエチレン製造会社と主要製品[4]
京葉コンビナートには4系統のエチレン製造拠点が集積し、合計約210万t/年(国内生産能力の32%)を占めます。
| 会社 | エチレン能力 | 主な製品 |
|---|---|---|
| 京葉エチレン(市原・住友化学・三菱ケミカル等合弁) | 69万t/年 | エチレン・プロピレン・ブタジエン |
| 三井化学(市原) | 55.5万t/年 | エチレン・ポリウレタン原料(MDI)・機能性樹脂 |
| 丸善石油化学(市原) | 48万t/年 | エチレン・プロピレン・ブタジエン |
| 出光興産(千葉) | 37.4万t/年 | エチレン・スチレンモノマー |
| 合計 | 約210万t/年 | — |
三井化学と出光興産は、2027年度をめどに千葉地区のエチレン装置を1基集約することで合意しています(2024年発表)。統合後は京葉地区全体のエチレン能力が再編される見通しです。
なお国内全体では、エチレン設備は2014年以降の自主停止・集約により、ピーク時の15基740万t/年から2024年時点で12基620万t/年に縮小しています。さらに集約計画が確定・検討中の案件が含まれると、将来的には8基440〜450万t/年程度になる見通しです[4]。
エチレン誘導品の主な用途: ポリエチレン(PE)→包装フィルム・容器、エチレンオキシド(EO)→界面活性剤、塩化ビニル(PVC)→パイプ・建材
コンビナートの生産規模と千葉県経済への貢献
京葉臨海コンビナートは「我が国最大の素材・エネルギー産業の集積地」と位置づけられ、千葉県の製造業を牽引しています[1]。
| 指標 | 数値 | 国内・県内での位置 |
|---|---|---|
| 製造品出荷額 | 約10兆円規模 | 千葉県全体の約 60%(R4経済センサス) |
| エチレン生産能力 | 210万トン/年 | 国内 1位(32%) |
| 原油処理能力 | 71.5万バレル/日 | 国内 1位(18%) |
| 粗鋼生産量 | 1,316万トン | 国内 2位(12%) |
| LNG貯蔵能力 | 377万kl | 国内 1位(21%) |
| 事業所数 | 236事業所 | 千葉県全体の 4.5% |
| 従業員数 | 34,469人 | 千葉県全体の 17.3% |
主要製油所
京葉工業地域には国内最大クラスの製油所が集中しています。
| 製油所(会社) | 所在地 | 処理能力 | 主な生産品 |
|---|---|---|---|
| ENEOS千葉製油所 | 市原市 | 175,000 BD | ガソリン・灯油・軽油・LPG・ナフサ |
| 出光興産千葉製油所 | 市原市 | 220,000 BD | ガソリン・軽油・灯油・アスファルト |
| コスモ石油千葉製油所 | 市原市 | 175,000 BD | ガソリン・灯油・軽油・石化原料ナフサ |
| 富士石油袖ケ浦製油所 | 袖ケ浦市 | 143,000 BD | ガソリン・灯油・軽油・重油 |
BD = Barrels per Day(バレル/日)。1バレル = 約159リットル。4社合計で約71.3万BD。
鉄鋼セクター — JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)
JFEスチールの千葉地区は、薄板鋼板(冷延・熱延)と厚板を中心に生産する一貫製鉄所です。現在稼働中の高炉は第6高炉の1基(第5高炉は長期休止・事実上廃止)で、粗鋼生産能力は年間約250万トン[5]。
製鉄所の一貫プロセス:
歴史的背景
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1956 | 千葉県が東京湾岸埋立事業を本格化。工業用地造成開始 |
| 1961 | 川崎製鉄(現JFE)千葉製鉄所が高炉操業開始。京葉工業地域の起点 |
| 1964 | 三菱石油(現ENEOS)千葉製油所操業開始 |
| 1965〜 | 住友化学・丸善石油化学などのエチレンプラントが相次いで完成 |
| 1973 | 第1次オイルショック。石油系原料価格が4倍に跳ね上がり、収益構造が激変 |
| 1986〜 | プラザ合意後の円高で輸出競争力低下。コンビナートの再編・合理化が本格化 |
| 2000年代 | ENEOSが旧日石・三菱石油・ジャパンエナジーを統合し国内最大の石油会社へ |
| 2023 | ENEOSが和歌山製油所を閉鎖。国内製油所の集約・大型化が続く |
| 2025〜 | 京葉臨海コンビナートGX推進協議会が始動。燃料用アンモニア大規模受入基地の整備を検討[2] |
市場構造とサプライチェーン上の位置
首都圏(関東)はGDPの約35%を占める最大消費地であり、京葉コンビナートの製品は以下のチェーンで流通します:
- 石油製品:タンクローリー・パイプライン経由で首都圏のガソリンスタンド・工場へ
- 石化製品:タンク車・コンテナーで川下の誘導品メーカー(包装材・繊維・塗料等)へ
- 鉄鋼製品:コイル輸送で自動車工場(栃木・群馬・神奈川)や建設需要へ
コンビナート内の企業間ではパイプラインによる液体・ガスの直接融通が行われており、輸送コストの大幅削減とCO₂排出削減に貢献しています。たとえば、製油所余剰のナフサは隣接する石化プラントへパイプラインで直送されます。
主要上場企業データ
参考文献・出典
- [1] 千葉県ほか「京葉臨海コンビナート国際競争力強化」国家戦略特区WG提出資料(2015年11月)PDF
- [2] 京葉臨海コンビナートGX推進会議の開催について https://www.pref.chiba.lg.jp/carbon/press/2025/01-gxk-press.html
- [3] JPCA 石油化学工業協会 三菱ケミカルコンビナート (鹿島) PDF
- [4] 石油化学工業協会「製造業ベンチマーク検討WG説明資料」経済産業省産業構造審議会(2025年7月)PDF
- [5] JFEホールディングス株式会社「有価証券報告書2023年度」(2023年)https://www.jfe-holdings.co.jp/investor/library/annual_securities_report/
- ENEOSホールディングス株式会社「有価証券報告書2023年度」(2023年)https://www.eneos-hd.co.jp/ir/